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Season 14

繁殖ゲーム

オアフ島唯一のプライベートなシュノーケル用珊瑚礁は、魚たちが次々に命を生み出すワンダーランドです。



コ・オリナにあるディズニー・リゾート・アンド・スパ、アウラニのプールエリアでは、海水の珊瑚礁が昼前の日差しを受けてまぶしく輝いている。水面下では何百というハワイの熱帯魚たちが、彼らの生息地をそっくり再現したおよそ350平方メートルの珊瑚礁を優雅に行き来する。〈レインボー・リーフ〉とディズニーらしい名がつけられたこの珊瑚礁でゲストはシュノーケルを楽しみ、エンジェルフィッシュやサージョンフィッシュが描くカラフルな水中の景色を堪能する。ゲストに魅惑のひとときを提供する珊瑚礁は、魚たちが繁殖しやすい環境がととのっているため、アウラニの環境保護の取り組み上でも重要な役割を果たしている。

〈レインボー・リーフ〉は、観賞魚産業における海水魚養殖の可能性を探るため、〈ライジング・タイド・コンサヴェーション〉という団体とハワイ・パシフィック大学海洋研究所が取り組む実験的な繁殖プロジェクトに2016年から協力している。野生の魚の乱獲を避けるために淡水魚を養殖するのは一般的だが、養殖に成功した海水魚の種類はまだとても少ないのだ。

プロジェクトの成功に欠かせないポイントは2つある。プロジェクトに協力する〈レインボー・リーフ〉や水族館などで計画的に受精卵が採取できるかという点と、海洋研究所の水槽で仔魚が稚魚になるまで育てられるかという点だ。珊瑚礁内の生態系が細心の注意を払って管理されていて、たくさんの卵を採取できることから、プロジェクトがはじまった当初から〈レインボー・リーフ〉は理想的な受精卵提供者として注目されていた。

「珊瑚礁の魚たちは安心して快適に暮らしているので、それ以外のことを考える必要もないんですよ。毎日せっせと卵を産んでます」と語るのは、アウラニの生物および水質科学部門のマネージャー、ラファエル・ハシントさん。「親魚の健康管理はわれわれが得意とするところです。餌の養殖やマイクロアルジェ(微細藻類)、仔魚の餌やりなどは海洋研究所の養殖チームの担当ですが、そちらのほうがいろいろ大変なんですよ。それぞれが最善を尽くしてプロジェクトに取り組んでいます」

ハシントさんによれば、〈レインボー・リーフ〉の魚の繁殖力が高いのは、注意深く生態系の調和をたもってきたスタッフの努力の賜物だ。ハワイ沿岸の環境を模して、肉食種はほとんど入れず、魚の大半を草食種にするなど魚種のバランスに気をつけていることも、魚たちの健康と繁殖力の維持に大きく貢献している。

海洋研究所の海洋魚養殖プログラムに上級研究者としてたずさわるスペンサー・デイビスさんは、〈レインボー・リーフ〉のチームは、このプロジェクトのコンセプトが間違っていないことを証明しているという。チームが一丸となってプロジェクトに取り組んでいる点も見逃せない。「スタッフみんながお互いの功績を高く評価している。そのことがすばらしい相乗効果を生み出しています」

チームワークが夢を現実にした。受精卵の採取予測が可能であることを最初に立証したのも〈レインボー・リーフ〉だし、このプロジェクトのおかげで、ハワイ固有種で鮮やかな青と黄色が美しいハワイアン・クリーナー・ラス(ホンソメワケベラのハワイ版)やポッターズ・エンジェルフィッシュ、さらにはハワイ原産のキーカーカプ(チョウハン)やラウウィリウィリヌクヌクオイオイ(フエヤッコダイ)などの繁殖の様子も初めて記録されたのだ。

産卵されたばかりの魚の卵は、ナイロンメッシュの容器を使って〈レインボー・リーフ〉の数カ所で回収される。フロートテストを行って受精卵と非受精卵とを分け(受精卵は浮く)、ふ化した仔魚は海洋研究所への移動に向けて酸素を注入した水の袋に入れられる。〈レインボー・リーフ〉では、魚たちの健康状態をきちんと確認するために定期的に産卵数を記録している。「卵の数が急激に減ったときは、餌や生活環境など、何かのバランスが崩れていないかを調べます」とハシントさん。2025年現在、〈レインボー・リーフ〉は一回の回収ごとに約3万から10万個の受精卵を提供して、海洋研究所が継続する養殖プログラムへの協力を続けている。

ワイマナロにある海洋研究所の防菌施設では、数を確認した魚卵を過酸化水素の水溶液で消毒してから1トンの稚魚飼育水槽に入れる。デイヴィスさんによれば、稚魚の飼育過程でもっとも重労働なのは餌となるプランクトンの栽培だそうだ。種類の違う魚たちにそれぞれ適した餌を与えるのはもちろん、成長するにつれてプランクトンの種類も増やさなければならない。「生きもの相手ですから休みはありません」デイヴィスさんはつけ加えた。「1日8時間以上、実際にここに来て世話をしなければならないんです」魚の種類によって期間は1〜3ヶ月と幅があるが、幼魚の段階にまで成長してやっと粒状の人工餌で対応できるようになる。

ここまで成長した養殖魚は、海洋研究所が提携する連邦政府や州政府機関、公立の水族館、魚の卸売業者や小売業者、あるいは保護団体が引きとる。昨秋、海洋研究所と〈レインボー・リーフ〉はハワイ州土地と自然資源局とともに、養殖したキイロハギ300匹をアウラニ前の海も含めてオアフの沿岸各地に放流した。その目的は、魚の個体数を増やすことではなく、生態系の回復だ。流出した堆積物や、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルが入っている日焼け止めなどの有害物質は、侵略的外来種で珊瑚を窒息させるターフ・アルジー(藻の一種)を増加させてしまう。キイロハギはそのターフ・アルジーを食べてくれるのだ。

「〈レインボー・リーフ〉のオープン時、約300匹のキイロハギがいたんです」ハシントさんは振り返る。「あの日、わたしたちはほぼ同じ数のキイロハギを海に返すことができました。とても感慨深かったですよ」

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