リーダーとしての自分を育ててくれた土地への愛情を胸に、〈ホア・アーイナ・オ・マーカハ〉のエグゼクティブ・ディレクター、チェルシー・ジェイさんは食物とコミュニティを育てています。
わたしはマーイリで育ちました。子供時代に海と山、両方に囲まれて過ごせたのはとてつもなく幸運だったと思います。自分の故郷や文化への深い愛情はこの特別な子供時代に育まれたものですし、郷土愛があるからこそこの仕事を選んだんです。海で泳いだりサーフィンをしたり、キャンプのときにウエストサイドの美しい夕日を眺めたことなど、小さい頃の記憶の多くはオハナ[家族]と一緒に過ごした海の記憶です。大人になった今も海に行き、サーフィンも続けていますが、それは心身の健康のためだけでなく、自分の先祖とつながるため、ハワイアンとしてのあり方、ハワイアンとしての見聞を深めるためでもあるんです。
日本の中学1年生にあたる7年生から、カメハメハ・スクール(ハワイアンの血を引く子供たちが通う、ハワイ文化を重視する私立校)に通い、積極的にオーレロ・ハワイ[ハワイ語]を勉強しました。ハワ イアンとしての自分をより深く理解したいという思いが強かったので、とれるかぎりのハワイ語の授業をとりました。高校を卒業したら大学に進み、オーレロ・ハワイのクム[先生]になるのが夢でしたが、 祖母の近くにいたかったのでシアトルの大学に進学しました。ワイピオ・ヴァレーは高校時代にハワイ語の授業で訪れましたし、大学時代は〈プロテクト・カホオラヴェ・オハナ〉の一員としてカホオラヴェ島を訪れる機会にも恵まれました。情熱あふれる人々とこうした場所でアーイナ[土地や海。恵みをもたらすもの]に触れたことで新たなものの見方ができるようになり、アーイナと教育を結びつけることがハワイ文化の継承につながることにも気づきました。
多くの人々の支援と協力もあり、〈ホア・アーイナ・オ・マーカハ〉は、何世代にもわたって食物を育てながらそこに暮らす人々も育くんできました。エグゼクティブ・ディレクターに就任して以来、わたしの目標は愛する人々や土地のためにアウアモ・クリアナ[組織の目標を達成するための自分の役割]を果たすことと、同僚や理事、そしてコミュニティの人々と協力し、人々に愛されてきたこの団体のすばらしい伝統とビジョンを大切にしていくことです。この先2年ほどは、時間をかけて信頼関係を築きつつ、仕事へのマア[理解]を深め、〈ホア・アーイナ・オ・マーカハ〉を愛する人々と意味のあるピリナ[絆]を結んでいきたいと思っています。
〈ホア・アーイナ・オ・マーカハ〉の少数精鋭のスタッフは、いずれもワイアナエに縁がある人たちです。指導力があり、問題を解決する能力に長け、深い考察のできる彼らと一緒に働けて光栄です。食物を育てること、人々の力になることに関してははかり知れない知識を持つ彼らですが、何より重要なのは一人ひとりが人としてすばらしいという点です。〈ホア・アーイナ・オ・マーカハ〉の仕事は人に優しく、アロハの精神に基づいています。ここは人からの愛もアーイナからの愛もしっかり感じられる場所なのです。
〈ホア・アーイナ・オ・マーカハ〉で時間を重ね、その歴史や本質をきちんと理解するにつれ、ますます愛おしく感じるようになりました。実際の活動内容は、食物を育てること、ケイキ[子供たち]を育むこと、再生力を重視しながらアーイナを修復すること、人々に食事を提供することなどですが、それだけではなく、より深いところで人々を育み、魂にも栄養を与えているんです。わたしたちの使命は”子供たちの目と手、心を通して、自然と調和しながら平和に満ちたコミュニティをつくること”です。アンティ・プアナニ・バーゲスがつけた〈ホア・アーイナ・オ・マーカハ〉という名前の意味は、”友情のもとに分かち合うマーカハの大地”。希望の種を植えることで培われた土地と人との深い絆を通して、わたしたちは〈ホア・アーイナ・オ・マーカハ〉の使命と名前を体現しています。
友人であり、アドバイザーでもあるマーカハ出身のカムエラ・イーノスさんに言われたのですが、アーイナは正しい人を呼び寄せるそうです。わたしは、自分がぴったりのタイミングで来るべき場所に来たと思っています。この場所がわたしを求めてくれるかぎり、なるべく長くここにいたいです。なんだか家に帰ってきたような気がするんですよ。
2023年、〈ホア・アーイナ・オ・マーカハ〉のエグゼクティブ・ディレクターに就任したチェルシー・ジェイさんは、10年の〈マーラマ・ラーニング・センター〉勤務を含めて10数年、オアフ島ウエストサイドのアーイナと人々のために働いてきました。今の目標は、自分が育ったワイアナエの人々の健康と幸せのために貢献することだそうです。