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Season 9

王家の紋章

クムに導かれ、ハワイ伝統の精巧な技を受け継ぐフェザーワーク職人



マカハにあるミワコ・モルダーさんの工房にいる。笑い声が静まり返り、部屋が急に静かになった。「フェザーを使って作業するときは、いつもこうなんです」とモルダーさん。「みんな集中して、静かになるんです」私は一つの手で柳のような房がイソギンチャクのように揺れるローズピンクの羽根の端を摘み、もう片方の手で花の土台となるワイヤーピックを握りしめている。私の不器用な手の動きを見ていたモルダーさんは、羽根のピックへの付け方を教えてくれた。羽を一本一本、手際よく芯に巻きつけていく。

10分後、12枚の羽根を巻き付け終わって完成した花に、モルダーさんは手を打って喜んでくれる。10年以上にわたって複雑で精巧なフェザー作品を作り続けているモルダーさんだが、シンプルな作品を完成させることに今も喜びを感じるという。「自然の羽根ってとてもきれいでしょう?」 と彼女は言う。「だから何度でも作りたくなるんです」

ハワイアンの人々もまた昔から鳥の羽根に魅了されてきた。羽根にはマナ(力)が宿っているとされ、ケープ、ヘルメット、レイ、カヒリ(棒の先に羽をつけた王室のシンボル)などの衣裳や道具に使用され、王族だけが身につけることができた。カメハメハ大王の床まである「アフウラ」と呼ばれる鮮やかな黄色のマントは、8万羽のマモと呼ばれる鳥から採取した45万本の羽根を縫い合わせたものだ。古代ハワイのキア・マヌ(鳥捕り)は、原生鳥を捕らえ、必要なだけ羽根をむしり取り、傷薬を塗って野生に帰すという気の遠くなる作業を重ねて羽根を採取していた。そうすることで鳥たちは回復し、生き延びることができたのだ。

モルダーさんは、フェザーワーク職人のメアリー・ルー・ケクエヴァさんとその娘のポーレット・カハレプナさんの弟子にあたる。彼女たちは、この伝統文化を永続させるために生涯を捧げてきた。モルダーさんのフェザーとの出会いは、1999年にビショップ博物館で開催されたハワイアンキルトのワークショップに参加した際、フェザーワーク教室の案内を見たのがきっかけだった。その教室に参加して以来、彼女はフェザーレイの魅力の虜になったのだった。モルダーさんは、カパフル通りにある「ナ・リマ・ミリ・フル・ノエアウ」で開催されていたカハレプナさんのクラスに彼女が2014年に亡くなるまで週1回通っていた。

「まるで私を家族の一員にしてくれたようでした 」とモルダーさんは言う。「息子を産んだ後も毎週通い、私が羽織を習う間、アンティポーレットが息子の子守をしてくれていました」

モルダーさんにとって、それは必要なコミュニティだったという。川崎市出身のモルダーさんは、2001年にワイキキのビーチで出会った地元出身の夫と結婚し、ハワイに居を構えた。「主人はサーファーなので、朝起きるともういないんです」と彼女は振り返る。「私は座ってテレビを見ているのが苦手で、いつも何かしていたいタイプなのです」。彼女は他のハワイアンクラフトにも挑戦したが、ラウハラの帽子作りは数学的な正確さが要求され、キルティングは広い作業スペースが必要で、生まれたばかりの赤ん坊がいて、しかも活発な息子を連れていては、とても続けられなかったという。

モルダーさんが最初に作ったレイはカモエスタイルだった。毛糸の土台に羽根を寝かせるように括りつけていき、親指ほどの幅の筒状で、ベルベットのような光沢のある黄色いレイに仕上がっている。インターネットの普及で羽毛の調達は容易になったとはいえ、フェザーレイ作りの工程はとても細かい作業を要する。まずはレイ作りを始める前の下準備として、羽根を色別に分類し、大きすぎる羽根は切り落とす必要がある。キジの首を飾る可憐な羽根を使って作られたサテンのように滑らかに仕上がりのフムパパ(帽子を飾るハットバンド)を指で触ってみる。真夜中の漆黒のように深いブルーの帯にアクセントのように入った鮮やかな白い線が一際目を引く。

このハットバンドのブルーとグリーンの羽をそれぞれ別のタッパーに分ける選別作業には、2ヶ月近くを要したという。次は、特製の台の上にピンと張られたフェルトの上にピンセットで羽根を一本ずつ置いていく作業だ。小指ほどの大きさの羽根を1回、2回、3回と縫って固定し、一列を作るのに10枚から11枚の羽根を使用する。モルダーさんは8時間かけて2.5センチほどの作品を完成させることができる。

「私は小さい羽根が好きなんです」と彼女は言う。「ここに来る人は、理解できずに『なんて緻密な作業なの!』って驚くんですよ。私のクムはいつも私にこう言っていました『あなたはおかしな子ね』って。でも実は、羽根って不思議と心を落ち着かせれくれるんです。怒っている時、これは私にとって瞑想のようなものです」

8年以上前にカハレプナさんが亡くなる以前から、彼女は教え子のモルダーさんに自分の店を開き、フェザーレイを教えることを許していたが、モルダーさんは今年の初めまで教室を開く自信がなかったという。最初からハットバンドやレイ作りに挑戦するのは難易度が高すぎるという人のために、モルダーさんは誰でも気軽に作れるものを用意している。さっき私が作ったシンプルな花と同じようなものを透明なガラス玉に挿してクリスマスオーナメントにしたり、レイに通したり、頭につけるカラフルなハクにしたりできる。彼女の生徒の一人は、ウィリ・ポエポエスタイルのレイ作りに取り組んでいる。羽根が立っているようなふんわりとした仕上がりなので、多少のミスは目立たないのであろう。

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